コピー機やプリンターを導入しようとしたとき、「インク」を使用する製品と、「トナー」を利用する製品があり、迷うことはありませんか?
インク、トナーはどちらも、無ければ印刷・コピーができないものだということは同じなのですが、根本的な部分から違いがあります。
簡単にいえば、インクは「液体」、トナーは「粉」です。
もちろん印字をする仕組みも異なり、利用目的や用途によって選ぶ必要があります。
そこで今回は、インクとトナーの違いについて、
・特徴
・印字方法(仕組み)
・印刷時間
・メリット・デメリット
以上、4つに分けてご説明いたします。
1.コピー機のインクとトナーの特徴の違い
それでは最初に、コピー機のインクとトナーの特徴の違いについて見ていきましょう。
「インク」の種類と特徴とは?
まず、インクには種類があり、
➀顔料インク
➁染料インク
と、大きく2種類に分けられています。それぞれの特徴は簡単には以下の通りです。
➀水に溶け切っていない「顔料インク」
顔料タイプの特徴として、着色に用いる粉末が完全に水に溶けきってないインクのことになります。
特徴として、着色用の粉末粒子が大きいため、インクが用紙の中まで染み込まず表面に定着するので、線や色がくっきりと出せます。色が鮮明で着色力が強く、耐熱性・耐水性・耐光性に優れており、光にさらされても色褪せしにくく、水に濡れてもにじみが出にくいことも特徴です。
➁高い浸透力がメリットの「染料インク」
染料タイプは、顔料タイプとは逆に、着色用の粉末粒子が細かく溶剤に溶けきったインクのことを指しています。
特徴として、浸透性が高いため、用紙の繊維内部にしっかり浸透するような状態で印刷されることです。色の再現度が高く光沢・発色が良いので、透明感のある仕上がりになります。その特徴から、
「顔料タイプ」は、文字や図が中心のビジネス文書向き
「染料タイプ」は、写真印刷に強いことから写真をよく印刷する人向き
というように、使い分けて利用します。
また、インクには、4色インク」と「6色インク」の製品があり、大きな差はないものの、6色インクで印刷したほうがより色が鮮明になります
「トナー」の特徴
そもそも「トナー」とは、レーザープリンターやコピー機・複合機で使用され、文字や表などを印字するときに必要な「粉」のことです。
トナーの粒子は、シイタケの胞子の大きさとほぼ同じ1000分の5ミリ程度と非常に小さく、肉眼では見ることはできないでしょう。
トナーはもともと、見えない電子の像を具現化する工程「toning(トーニング)」が変化して「toner(トナー)」となったものとされています。
また、ひと昔前はモノクロのコピー機しか無かったため、トナーは黒一色でしたが、現在ではカラーコピー機・複合機が主流となり、トナーの色は、
・シアン(青)=C
・マゼンタ(赤紫)=M
・イエロー=Y
・ブラック=K
と、4色搭載する仕様になっているので、色の組み合わせで彩り豊かなカラー印刷できるのです。
トナーは、先程も説明した通り、1000分の5ミリ程度と非常に細かい粒子なので、トナーは通常、「カートリッジ」と呼ばれる専用の容器に詰められた状態のものを、プリンターやコピー機・複合機に挿入して使用します。
以上の様に、インクは「液体」、トナーは「粉」、ということから、特徴は大きく異なります。
2.コピー機のインクとトナーの【印刷方法】の違い
インクは「液体」、トナーは「粉」という違いから、印字方法も大きく異なります。それぞれの一般的な印字方法をご紹介いたします。
「インク」の印刷方法とは?
インクを利用する印刷方法には、
➀オンデマンド型
➁コンティニュアス型
と、2つの方式があります。
➀「オンデマンド型」
オンデマンド型は、印字に必要な量のインクを吐出する方式で、家庭用のインクジェットプリンターは、ほぼすべてオンデマンド型になります。
オンデマンド型はインクに圧力を加える方法により、
・ピエゾ方式
・サーマル方式
・静電方式
と、さらに3種類に分けられます。
➁「コンティニュアス型」
コンティニュアス型は、ノズルから連続的に吐出したインクを帯電させ、偏向電極で曲げて印字面に吹き付ける方式です。偏向電極で曲げられなかったインクは回収され、インクタンクに戻り再利用されます。印字をしないときもインクは常に連続的に吐出されているため、コンティニュアス型といわれています。
以上のように、基本はインクを用紙に吹き付ける印刷方式になります。
「トナー」の印刷方法とは?
トナーは、光伝導物質を塗布した感光体ドラムにレーザー光線で文字や画像の形を照射して潜像をつくり、トナーで現像して用紙に転写する方式です。トナーを熱と圧力を利用して紙に定着させていますので、コピーしたての紙が温かいと感じるのは、熱を使っているからです。
一般的な印刷の仕組みは以下の通りです。
➀「帯電」
プリンターやコピー機の感光体ドラム表面全体に、均一に静電気を帯びさせます。
➁「露光」
レーザービームやLEDで、印刷データのパターンを帯電した感光体ドラムに画像を描きます。レーザー光の照射部分は静電気がなくなります。
➂「現像」
トナーが感光ドラムに近づくと、静電気のない部分にだけトナーが付着します。
➃「転写」
感光ドラム表面に用紙を密着させ、用紙裏側からプラス電荷をかけることにより、感光ドラム上のトナーを用紙に移します。
➄「定着」
トナーが転写された用紙に熱と圧力を加える方式や光を当てて融着させる方式で、トナーを用紙に定着させます。
以上の様な一連の流れで、コピーや印刷ができます。
印刷方法の違いは簡単に、インクは「インクを吹き付ける」、トナーは「熱で圧着する」、というように、全く異なる印刷方式になります。
出典:リコー(RICOH)
3.コピー機のインクとトナーの【印刷時間】の違い
インクとトナー、それぞれ印刷方法が全くことなることから、印刷に要する時間はどちらが早いのか?
何となくお分かりの方もいらっしゃると思いますが、インクは、吹き付けて印刷するため、時間が経てば経つほどインクが紙に浸透することから、浸透して色が安定するまで時間がかかってしまいます。一方のトナーでは、紙にトナーが乗っているだけの状態なので印刷をスピーディーに進められます。
このことから、大量に印刷する場合は、インクよりトナーの方が圧倒的に早いと言えます。
しかし、写真などの画像を印刷するときは、トナーよりインクの方が再現力や透明性は高くなります。
4.コピー機のインクとトナーの【メリット】と【デメリット】
ここまで、インクとトナーを、特徴・印刷方法・印刷時間の3つの要素で違いをご覧いただきましたが、最後にまとめとして、インクとトナーのメリット・デメリットの確認をしていきましょう。
「インク」のメリットとデメリットとは?
■メリット
・顔料インクでは、耐水、耐光性が高い
・写真などの高画質印刷に向いている
・1本のインクの容量がすくないので、コストがかかる
■デメリット
・水と光に弱い(にじみ、色あせ)
・大量印刷には向かない
・印刷面を擦ると色落ちしやすい
「トナー」のメリットとデメリットとは?
■メリット
・大量印刷に向いている
・高速の印刷が可能
・インクよりもコストが安い
■デメリット
・インクに比べ、単価が高い(純正・リサイクル問わず)
・写真等の高画質の印刷には適さない
主に、以上のようなメリット・デメリットが考えられ、結論は、インクは家庭用、トナーはビジネス用ということにまとまるのではないでしょうか。
5.まとめ
インクとトナーの違いについて説明してまいりましたが、根本的に違うと理解しておいて問題ないでしょう。特徴などを比較した場合、前提のとおり、インクを利用したインクジェットコピー機は家庭用であり、トナーを利用したレーザーコピー機や複合機はビジネス用となりますね。
一般のご家庭では、トナーを利用したコピー機を使うことはまずないかと思いますが、企業や会社でコピー機を導入する際には、インクとトナーの特性を理解して、使い分けると業務の効率があがるのではないでしょうか。